はじめに
「ステロイド治療を勧められたけど、副作用が心配」
「ステロイドは強い薬だから使いたくない」
患者さんからは、こういったステロイドに関する不安や、逆に
「ステロイドを中止すると調子が悪くなるから、やめたくない」
といったステロイドに依存するような発言をいただくことがあります。
潰瘍性大腸炎やクローン病において、ステロイドは非常に有効な治療薬ですが、どういった場面で効果を発揮する薬なのかや、その副作用について正しい知識を持っておく必要があります。
この記事では、IBDにおけるステロイド治療について、効果や副作用、実際の使い方を専門医の立場から分かりやすく解説します。
結論 ステロイドは「炎症を素早く抑えるための薬」です
ステロイドは、IBDの炎症を強力に抑える薬剤です。
特に、症状が強く、早く炎症を落ち着かせたいときに大きな効果を発揮します。
ただし、長期間使い続ける薬ではありません(特に強調したいポイントです)。
ステロイドの役割は、「炎症を素早く抑え、その後の治療につなげること」と考えると分かりやすいと思います。
ステロイドとは?
ステロイド(副腎皮質ステロイド)は、強力な抗炎症作用を持つ薬です。
IBDでは、プレドニゾロンやブデソニド(全身への副作用が少ないステロイド)などが使用されます。
炎症を抑える効果が高く、多くの患者さんで症状の改善が期待できます。
どんな時に使用するのか?
主に以下のような場合に使用されます。
潰瘍性大腸炎
・メサラジン(5ASA)製剤だけでは症状の改善がない。
・中等症から重症の再燃
・入院が必要な重症例
クローン病
・炎症が強い活動期
・症状が急激に悪化した場合
ステロイドのメリット
最大のメリットは、「効くのが早い」ことです。
治療薬にもよりますが、生物学的製剤や免疫調整薬は効果発現まで時間がかかることがあります。
ステロイドは比較的早く症状の改善が期待できます。
ステロイドの副作用(主にプレドニゾロン)
患者さんが最も心配される部分です。代表的な副作用として、
短期間でも起こりうるもの
・不眠症、気分の変化
・食欲増進
・ムーンフェイス、浮腫
・消化性潰瘍
長期間の使用で問題になるもの
・感染症
・糖尿病
・高血圧症
・脂質異常症
・骨粗鬆症
・白内障・緑内障
などがあります。
こういった副作用リスクを事前に評価(B型肝炎や結核の既往、精神疾患や糖尿病の有無)して、ステロイドを使用しています。
なぜ長く使わないの?
非常に重要なポイントです。
ステロイドは、炎症を抑える力は強い一方で、安定した状態を長期間維持する効果はありません。
加えて、ステロイドの長期使用は副作用が必発です。
そのため、現在のIBD治療では、
・ステロイドで速やかに炎症を抑える
・ステロイドは減量・中止し、生物学的製剤やJAK阻害薬、免疫調整薬による治療に繋げる
っといった考え方が主流です。
ステロイド依存とは?
IBD診療でよく問題になるのが、ステロイド依存です。
具体的には、
・ステロイドを減量すると再燃する
・結果、ステロイドを減量・中止できない
・そのため、ステロイドを何度も繰り返し使用する
状態を指します。
この場合、治療方針の見直しが必要になることがあります。
実際の診療での考え方(専門医の視点)
症状が強い中等症以上の再燃や、入院治療を要する症例においては、まずステロイド治療を検討します。
ステロイド治療を開始する際は、ステロイドの減量スケジュールを同時に立てて、3ヶ月程度でステロイドを中止できるよう計画します。
ただし、これまでの治療歴や、ステロイド治療による弊害(主に副作用リスク)を考慮して、ステロイドの代替手段を提案したり、早めに生物学的製剤やJAK阻害薬を導入することがあります。
このように、実際の診療では、「ステロイドを使うかどうか」だけでなく、
「どうやってステロイドから離脱するか」を同時に考えながら治療を進めていきます。
よくある質問
Q. ステロイドは危険な薬ですか?
副作用には注意が必要ですが、適切に使用すれば非常に有効性の高い薬です。
Q. 一度使うとやめられなくなりますか?
必ずしもそうではありません。むしろ、ステロイドを長期に使用することは好ましくないため、開始する時には使用期間を設定することが多いです。減量・中止で再燃するようであれば、生物学期製剤やJAK阻害薬、免疫抑制薬での維持治療につなげることを検討します。
Q. ステロイドと生物学的製剤は何が違うのですか?
ステロイドは炎症を速やかに抑える薬です。
一方、生物学的製剤は現在の炎症を抑えるだけでなく、長期的に炎症をコントロールするための治療として使われます。
まとめ
ステロイドは、IBD治療において非常に重要な薬です。
・強力な抗炎症作用がある
・効果の発現が早く、症状を速やかに改善させる
・長期的に症状を安定化する効果はない。副作用の観点から長期使用は避ける
という特徴があります。
現在のIBD治療では、
「ステロイドを使うこと」ではなく、
「ステロイドに頼らない状態を目指すこと」
が重要になってきます。
治療方針について不安がある場合は、主治医と相談しながら、自分の病状にあった治療を選択していくことが大切です。
