はじめに

IBD、特に潰瘍性大腸炎と診断された時に、最初に処方されることが多いのが”メサラジン(5ASA)製剤”です。

しかし、頻用される薬にも関わらず、

・メサラジン製剤ってどんな薬?

・同じ成分なのに、なぜ色々な種類があるの?

・ずっと飲み続けた方がいいの?

・坐剤や注腸が使いにくい。

と感じる方も少なくありません。

この記事では、メサラジン(5ASA)製剤について、専門医の立場から分かりやすく解説します。

結論 メサラジン(5ASA)製剤は潰瘍性大腸炎の治療の”土台”になる薬です。

メサラジン(5ASA)製剤は、潰瘍性大腸炎の治療の基本となる薬です。

軽症〜中等症の患者さんでは中心的な治療となり、症状が落ち着いた後も”再燃予防”として非常に重要な役割を担っています。

「症状がないからやめていい薬」ではなく、”炎症を安定して抑え続けるための薬”として考えることが大切です。

メサラジン(5ASA)製剤とは?

メサラジン(5ASA)製剤は、大腸粘膜に作用し炎症を抑える作用を持つ薬です。

ステロイドのように免疫を強力に抑える薬ではなく、安全性が比較的高いことが特徴です。

潰瘍性大腸炎と診断されたらまず最初に処方されることが多く、症状が落ち着いた後の再燃を予防する上でも重要な役割を果たす薬です。

なぜ色々な種類があるの?

患者さんから非常によく聞かれる質問です。

剤形や大きさ、1日あたりの最大用量、服用回数などに違いがありますが、一番の違いは、メサラジンの徐放特性(メサラジンがどこで放出されるか)にあります。

メサラジン(5ASA)製剤の治療効果は、大腸粘膜のメサラジン濃度に依存します。

そのため、服用後に薬剤が吸収されないようにして大腸の最適な場所にメサラジンが届くようにしなければなりません。

そのための特殊なコーティングがしてあり、コーティングの種類により3種類の薬剤があります。

主なメサラジン(5ASA)製剤の違い

◾️ペンタサ™️

エチルセルロースでコーティングされた時間依存型放出製剤。

小腸からメサラジンが放出されるため、クローン病にも適応があります。

顆粒製剤があるため、錠剤が飲みにくい方にも処方しやすいです。

小腸からメサラジンが放出されるため、下痢が激しい時にも薬効が期待できます。

◾️アサコール™︎

オイドラギットSでコーティングされたpH依存型放出製剤。

pH>7になる回腸末端(小腸の終点)からメサラジンが放出されます。

服用回数が1日3回のため飲み忘れに注意が必要です。

下痢が激しい時は、薬剤が割れずに出てくることがあります(ゴーストピル)。

◾️リアルダ™︎

pH応答性にコーティングされたpH依存型放出製剤。

pH>7になる回腸末端(小腸の終点)からメサラジンが放出されます。

マルチマトリックス構造により直腸までメサラジンが持続的に放出されます。

最大用量が最も多いため、他のメサラジン製剤よりも有効性が期待できます。

メサラジンの徐放特性から、左側大腸や直腸の炎症が強い患者さんに最適と考えられます。

服用回数は1日1回ですが、錠剤のサイズが大きいこと、冷所保存が必要な点に注意します。

坐剤・注腸も有効な治療

潰瘍性大腸炎の炎症は、典型的には直腸から始まり、口側に拡がっていきます。そのため、炎症の出発点である直腸の炎症を抑えることが非常に重要です。

坐剤や注腸は、直腸やその口側のS状結腸に直接メサラジンを届けることができ、上手に使えると非常に有効です

坐薬は硬く挿入しにくいためワセリンを併用したり、注腸は刺激が強いため上澄を捨てて量を減らす、などの工夫をすることがあります。

症状が落ち着いても続けた方がいい?

基本的には、終生服用し続けることが好ましく、自己判断で中止しないことが重要です。

潰瘍性大腸炎では、症状がなくても腸に炎症が残っていることがよくあり、その状態で服用を中断すると、高率に再燃します。

メサラジン(5ASA)製剤を継続することで、再燃の予防につながることが期待されます。

実際の診療での考え方(専門医の視点)

メサラジン(5ASA)製剤は、特に潰瘍性大腸炎の治療において非常に重要な薬です。

大腸のどこに炎症があるか、患者さんの好み(錠剤か顆粒か、錠剤のサイズ)、生活スタイル(主に服用回数。昼も飲めるのか?)、局所治療を行うべきか、などを考えながら薬剤を選択します。

概ね症状が安定していても、

・便の表面に粘液・血液が付着していないか

・残便感がないか

などの症状を細かく聴取し、大腸の炎症の具合を想像しながら、治療内容を調整しています。

メサラジン(5ASA)製剤の副作用について

比較的安全性の高い薬ですが、以下のような副作用があります。

①頭痛・倦怠感

②薬剤性肺炎、胸膜炎、心膜炎、膵炎

①については用量依存性であり、メサラジン(5ASA)製剤の減量や、他のメサラジン製剤への変更を考慮します。

②については用量非依存性であり、メサラジン(5ASA)製剤を中止します。

また、常に注意しなければならないのは、メサラジン(5ASA)不耐/アレルギーです。

近年、日本で増加傾向であり、メサラジン(5ASA)製剤を開始する潰瘍性大腸炎患者の約10%で発症すると報告されています。

具体的には、メサラジン(5ASA)製剤開始1〜2週間頃に、下痢の悪化や腹痛・発熱・倦怠感などで発症します。

潰瘍性大腸炎の再燃と区別が難しいことがあるため、疑わしい場合はメサラジン(5ASA)製剤の服用を中止します。

患者として感じること

メサラジン(5ASA)製剤は、”飲んですぐ劇的に変わる薬”というより、病気を安定させる土台のような薬だと感じています。症状が落ち着いていると、

「もう飲まなくてもいいのでは?」と思うこともあるかもしれません。

ただ実際には、調子が良い状態を維持するために続ける意味が大きい薬でもあります。

よくある質問

Q. メサラジン(5ASA)製剤はずっと飲み続ける必要がありますか?

病状によりますが、再燃予防のため長期的に継続することが望ましいです。

Q. メサラジン(5ASA)製剤はステロイド製剤ですか?

違います。ステロイドとは作用も副作用も異なる製剤です。

Q. 坐剤や注腸は必要ですか?

直腸やS状結腸に炎症がある場合には非常に有効です。

内服薬だけでは十分に炎症を抑えきれないことがあります。

まとめ

メサラジン(5ASA)製剤は、潰瘍性大腸炎の治療の基本となる重要な薬です。

・炎症を抑える

・再燃を防ぐ

・長期的な安定を維持する

といった役割があります。

また、内服薬だけでなく、坐剤や注腸を適切に組み合わせることも有効です。

今後の記事では、ステロイドや生物学的製剤との違いについても解説していきます。